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藤田 宜永 (作家) わがフェティシズムをくすぐる印判 |
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* | 僕はね、はっきりいって字が下手なんです。作家って達筆な人が多いでしょう。だから新刊が出たときサイン会なんか開くともう肩身が狭くて(笑)。「そんなことはない、味がある字ですよ」と言って慰めてくれる人もいるけど、やっぱり、コンプレックスだったんです。 そんなわけで数年前、妻の小池真理子が取材を通して知り合った彫刻家*の平野明さんが印判を彫って下さった時は嬉しかったですね。 ツゲの木で作った本格的なもので見た目も実に麗しい。これをサインの脇に落款として押せば、拙い字にも急にハクがつき、ありがた味がでてくる(笑)。おかげで永年のコンプレックスからもようやく解放されました。 それに男って、こういうアイデンティティになるような小物が大好きな生き物じゃないですか。「好きな字体を選んで下さい」と言われれば、いそいそと辞典を買い込んで中国古典文字を調べてみたり、ケースごと眺めてはほくそえんでみたり・・・。 なにより''世界でひとつ、僕だけの徴''という気持ちで押す愉しみがある。そう。男の中に潜むフェティシズムをくすぐる魅力が落款にはあるわけです。 |
| ふじた・よしなが(敬称略) 昭和25年4月12日生まれ。福井県出身。早稲田大学文学部中退。23才でパリに渡り、7年間を過ごす。帰国後、執筆をはじめ、61年「欲望のラビリンス」で小説デビュー。 ミステリーから恋愛小説まで幅広くこなし、平成7年「鋼鉄の騎士」で日本推理作家協会賞受賞。近刊「はなかげ」(集英社)も好評発売中。夫人は、作家の小池真理子さん |
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株式会社文芸春秋 週刊文春 1999 12月2日号より転載 (敬称略) (藤田氏、出版社より転載許可をいただいて、載せています。他への無断転載はご遠慮下さい。) |
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